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キープ奏法「おすすめの理由」~スポーツ的側面とその魅力「浮遊感」

これからキープ奏法におけるスポーツ的側面とその魅力、というテーマで色々書いてみたいと考えておりますが、まず今日はキープ奏法の特徴の一つであり、レッスンでも時折お話している「浮遊感」という感覚について書きます。

 

さて、今回私があえて「スポーツ的」という表現をしたのには複数の理由がございますが、一つはピアノ演奏に於いてスポーツ的という言葉が多くの場合「ネガティブ」な意味で使われていることに対する違和感があります。

 

ネガティブというのは、例えば「練習曲をスポーツのように弾かない」「ピアノはスポーツではないので指よりも先に音楽のイメージが無くては」「ピアノはスポーツのように人と競い合うものではない」といった使われ方のことです。

 

上記のような表現が意味していることは何となく分かる気がしますし、例えば最初の2つの例はMIDIで再生されたような機械的な演奏に対する警鐘なのかなと思いますが、スポーツは本来勝敗だけでなく身体を動かす爽快感や楽しさをもたらすという点でピアノと共通点があると思いますし、その他にもピアノを弾く上で、頭の中にある音楽のイメージに頼るだけでなく、ピアノ奏法のメカニズムをスポーツのように分析的に考えること等、「ポジティブ」な意味でスポーツ的に捉えることで、様々なメリットが生まれると考えておりますので、少しずつご紹介したいと思います。

 

前置きが長くなりましたが、キープ奏法をおすすめする理由でもある、音楽表現の自由度の高さと共に感じられる身体的爽快感、楽しさの例の一つとして、「浮遊感」という感覚がございます。

 

これまでのブログにおける説明と重複する部分もございますが、キープ奏法は、演奏の最初から最後まで同じタッチをキープして弾いていく奏法であり、ステップ1で行う「膝の上で指を十分に使って打鍵した」以上の重さを鍵盤の底面に加えたり、タッチの「バウンド」や「ラインのぶれ」(以前のブログをご参照ください)が起こることはございません。このように弾いていきますと、仮にピアノの鍵盤の底面を一枚の板と見立てるならば、その上を操り人形のように持ち上げた左右の手がまるで「這って行く」「スライドして行く」ような弾き方、動きとなり、主観では一種の「浮遊感」のような感覚が得られます。

 

この感覚は、個人的にはキープ奏法で弾くピアノ演奏においてとりわけ楽しいものの一つであり、ピアノが指で打鍵して弾く楽器でなくては得られなかったものと感じると共に、ピアノを演奏される皆様にも是非体験していただきたい感覚でもあります。

 

今日のブログは以上になりますが、今後もスポーツ的側面とその魅力という切り口から、キープ奏法をおすすめする理由について書いて参りたいと思います。